GOTS マークをハングタグに印刷する衣料ブランドは増えましたが、その使用条件を正確に理解している例は多くありません。誰が表示できるのか、事前にどの書類が必要か、ライセンス番号はどこから来るのか、タグや織りラベル自体の素材にも条件があるのか。GOTS は農場と工場における薬剤・生産要件と、サプライチェーン末端の表示ルールの両方を定めており、チェーンのどこかが切れると小売段階で回収や是正を求められます。本記事では認証チェーン、含有率基準、表示要素、サンプル前の確認点を順に整理します。
全6部構成です。GOTS が扱う範囲、2つのラベル等級の含有率基準、誰が表示できライセンス番号をどこに書くか、タグと包装自体の要件、OEKO-TEX と GRS との役割分担、最後にサンプルと発注前のチェックリストを整理します。
1. GOTS が扱う範囲:綿花畑からハングタグまでの全工程
- GOTS とは:Global Organic Textile Standard は、国際天然繊維産業協会(IVN)、英国ソイル・アソシエーション、米国オーガニック・トレード・アソシエーション、日本オーガニックコットン協会が共同で策定した、サプライチェーン全体を対象とする任意規格であり、1ロットの試験報告書ではありません。
- 対象範囲:認証オーガニック繊維を70%以上含む繊維製品で、綿繰り、紡績、製織、染色、プリントから縫製、梱包、商社まで、各工程の事業者が自らの段階で認証を受ける必要があります。
- 繊維以外の要件:特定の染料・助剤の禁止、塩素漂白や一部仕上げ剤の制限、排水と薬剤管理を承認済み投入物質リストの範囲内に置くこと、さらに社会的要件が含まれます。
- 試験報告書との違い:報告書は1ロットの残留値しか証明しません。GOTS が証明するのはチェーン全体が認証されていることです。立証の性質がまったく異なります。
2. 2つのラベル等級:95% と 70% の違い
| ラベル等級 | オーガニック繊維の含有率 | 表示できる文言 | 残りの部分に使えるもの |
|---|---|---|---|
| 第一級:オーガニック | 認証オーガニック繊維95%以上 | organic(オーガニック)と表示可能 | 最大5%、規格が定める繊維に限る |
| 第二級:オーガニックを含む | 70%以上 | made with organic とのみ表示 | 最大30%、ただし通常の非オーガニック綿は通常不可 |
含有率の分母分子、残りに使える繊維、文言の書き方は、現行の規格本文とラベリングガイドに戻って確認します。「70% でいい」という客先の一言で決めてはいけません。等級や文言の誤りは GOTS 案件で最も多い指摘事項の一つです。
3. 誰が表示できるか:ライセンス番号・認証機関・TC 証明書
- 認証事業者のみ使用可:マークと文言の使用権は、承認された認証機関の審査を通過した事業者に帰属します。ライセンス番号はその事業者のもので、認証範囲(製品区分・工程・地域で限定されることが多い)と一致しなければなりません。
- TC がバトンをつなぐ:認証製品の出荷ごとに、認証機関が発行する取引証明書(TC)が必要となるのが一般的です。川下のブランドや工場はこれで数量とロットを確認しますが、実務で最も漏れやすい書類です。
- 誰の番号を表示するか:ブランド自身が認証事業者でない場合は、誰が(通常は認証を受けた縫製工場か商社)ライセンス番号を表示し責任を負うのかを明確にします。契約書に一文入れておく方が、後から説明するよりはるかに安く済みます。
- 未認証製品には使用不可:認証外の製品は、原料が実際に認証農場由来であっても、マークや名称、それに由来する表現を使用できません。
4. ハングタグ・織りラベル・包装自体の要件
- 副資材には別条項:ボタン、ファスナー、縫い糸、内外ラベル、織りラベル、ハングタグは付属品または追加材料に区分され、個別認証は不要ですが素材と加工に制限があり、一部の塩素含有材料や PVC は除外されます。
- 紙とインキ:紙製のハングタグや紙袋は FSC の加工流通管理(CoC)由来の証明が望ましいです。インキとラミネートは許可リスト内に収め、移行や臭気はサンプル段階で確認し、量産後に素材変更にならないようにします。
- マークのレイアウト:マーク、ライセンス番号、認証機関の情報は欠けずに読める状態で表示し、分割使用や描き直しはできません。自社ロゴと同一面に載せる場合は境界を明確にし、ブランド自身の認証と誤解されないようにします。
- 条項は改定されます:材料リスト、比率要件、包装条項は規格の版ごとに変わります。発注前に現行の規格本文と認証機関の解釈を確認し、旧版のリストを引用しないようにします。
5. GOTS・OEKO-TEX・GRS:3つの証明書の役割分担
- 見ている点が違う:GOTS はオーガニックと加工チェーン、GRS は再生素材とトレーサビリティ、OEKO-TEX Standard 100 は最終製品の有害物質残留を対象とし、三つは別々の課題を解きます。
- 相互代替は不可:GOTS 認証品の残留値は Standard 100 の主要要件に近いと一般に言われますが、証明書同士の代替はできません。契約書が指定した報告書を提出します。
- 併用できます:オーガニックコットンと再生ポリエステルが同一製品に共存することは多く、表示文言はそれぞれの証明書に個別に対応させます。GRS の再生表示を GOTS のオーガニック表示に書き換えてはいけません。
- 見積時に明記:必要な証明書の名称、番号、発行機関を仕様書に記載します。供給側は提出書類と、ラベルに確保すべき要素・最小文字サイズを判断できます。
6. サンプルと発注前の6つの確認
- 1、主体:客先が認証を受けているか、番号と認証機関名を漏れなく記載し、この製品区分と工程が範囲に含まれるか確認します。
- 2、含有率と等級:第一級か第二級か、含有率は誰が計算・提供するか、表示文言はどの表現を使うか。
- 3、材料適合:ハングタグと織りラベルの紙、インキ、ラミネートが許容範囲内か、FSC などの由来証明が必要か。
- 4、包装:袋、外箱、テープに除外材料が含まれていないか、別途由来の表明が必要か。
- 5、出荷書類:このロットに TC が必要か、誰が申請するか、何営業日前に出すか、客先は PDF かデータベース参照かを確認します。
- 6、レイアウト:マーク、ライセンス番号、認証機関、ブランド情報の位置関係と最小文字サイズを、サンプル校正紙上に明示して客先の承認を得ます。
💡 実務のヒント:GOTS 案件で高くつくのは紙代や印刷代ではなく、書類不足による手戻りです。等級の誤り、ライセンス番号の記載漏れ、TC 未申請は、いずれも小売段階で止まる原因になります。6項目をチェックリストにして、サンプル前に客先と確認してください。
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