スイスは EU 加盟国ではありませんが、「EU のラベルがそのまま通る市場」と誤解されがちです。実際にはスイス独自の消費財法規があり、繊維組成表示は EU 規則とほぼ整合している一方、言語要件は自国の公用語に従い、輸入者がスイス市場の責任者役を担います。本記事ではスイスの衣料ラベルに必要な記載、使用言語、責任者とバーコードの扱い、見落とされやすい規制物質と子供服の安全要件を解説します。

1. 適用ルールの整理:スイスは EU でも EEA でもない

スイスは EFTA 加盟国で EU と二国間協定を結んでいますが、EU 関税同盟にも EEA にも属しません。つまり REACH、GPSR、PPWR などの EU 規則はスイスで直接適用されず、スイス国内法が同種の要求を引き受け、執行機関も異なります。繊維については、繊維組成と消費者情報、人体接触物品の規制物質、製品安全と市場監視の3本柱です。実務上は EU とスイスを1枚のラベルで対応できますが、言語、責任者情報、規制物質の3点をスイス基準で再確認することが前提です。

2. 繊維組成と言語:ドイツ語・フランス語・イタリア語

スイスの繊維組成表示は EU と同じ考え方です。繊維名と混率、混紡は含有量の多い順、約3ポイントの許容差、その他の繊維のグルーピングも EU ルールに沿います。つまずきやすいのは言語です。スイスの公用語はドイツ語・フランス語・イタリア語の3つ。全国小売では独仏併記が最も安全で、地域限定なら現地語、英語のみは通常は消費者情報の要件を満たしません。

  • スイスドイツ語では ß を使わない:ドイツ語表記では ß を ss と書き、フォントと組版の問題を避けます
  • 組成と現物の一致:洗濯表示ラベル、タグ、EC 商品ページの組成は一致させます。不一致が見つかると輸出側とスイス輸入者が責任を負います
  • 弾性繊維と微細繊維の表記:一般名称を先に、ブランド名を後に。ブランド名のみは検査で情報不足と判断されることがあります

3. 洗濯表示:法規で必須ではないが流通は求める

EU と同様、スイスもすべての衣料に洗濯表示ラベルの縫い付けを一般的に義務付けてはいません。しかし実務上、ケア情報のない商品はスイスの小売棚に載りにくく、消費者の基本的な期待にも合いません。ISO 3758 の記号体系に現地語の一文を添える運用がおすすめです。独語圏と仏語圏は1枚のラベルで共用でき、記号部分は完全に共通です。ドライ専用やアイロン不可など特別な扱いが必要な場合は、曖昧な示唆ではなく明確な結論を記載します。

💡 ヒント:スイスは市場が小さく言語が3つに分かれるため、「英語のみ」が最も多い失敗です。最もコスト効率が良いのは独仏併記の1枚で、小売の大半をカバーできます。英語は EC や観光チャネルで必要な場合のみ追加します。

4. 責任者と輸入者:スイスで誰が責任を担うか

製品をスイス市場に出す主体は製品安全の義務を負い、輸入者はその義務において通常メーカーと同等に扱われます。そのためスイス輸入者は自社名とスイス住所をラベルに載せることを求めます。監督機関と消費者の連絡先となり、責任の所在が明確になるためです。輸出側の一般的な運用は、主ラベルにブランド、洗濯表示ラベルに輸入者名とスイス住所を入れる固定スペースを確保する方法です。顧客が多チャネルのスイスブランドなら、そのスイス法人や販売代理店が担うこともできます。試験報告書、組成記録、規制物質報告は最低5年保管します。

5. バーコード・原産地・通関:GS1 プレフィックスと Made in

  • バーコードのプレフィックスと登録:スイスの小売は GTIN を読み取り、スイスの GS1 プレフィックスは 760 で始まります。ただしプレフィックスは発番機関を示すだけで原産地ではありません。輸入品は輸出者が登録した番号を使うことも一般的です
  • 原産地表示:Made in China または対象言語の同等表記は、通関で申告した原産地と一致させます。不一致は表示の是正指示につながります
  • スイスは EU 関税同盟外:EU とスイスに同じ貨物を送る場合は通関が別になります。ラベルと梱包書類も仕向地別に用意し、どちらにも合わない一式にならないようにします
  • 輸入時の税・関税:スイスの輸入 VAT と関税は輸入者が負担します。見積り条件が EXW、FOB、DDP のどれかを明記し、着荷後の費用論争を避けます

6. 規制物質と子供服:検査で最も見られる2項目

スイスは繊維や皮革など人体に触れる物品を専用の消費財法規に組み入れ、アゾ染料と分解性芳香族アミン、ホルムアルデヒド、重金属、アルキルフェノールエトキシレート、フタル酸エステルなどに制限を設け、金属部品のニッケル溶出も接触品として管理します。考え方は EU REACH に近いものです。子供服ではさらに、紐とドローストリング(業界は EN 14682 の判定を広く参照)と、小部品の固着および先端・エッジの安全性が重要です。スイスは OEKO-TEX 協会の所在地でもあり、スイスの顧客は規制物質の証として OEKO-TEX STANDARD 100 報告を直接求めることが多く、自社チェックリストより往復が減ります。

7. サンプル前の6項目チェック

確認項目確認内容
販売市場スイス専用か EU と同一ロットか。言語欄と責任者の書き方を決めます
言語構成独仏併記を基本に、独語圏やティチーノ州限定なら単語、英語はチャネル別に追加
組成と許容差繊維名と混率、多い順、約3ポイントの許容差とその他の繊維のグループ
ケア情報ISO 3758 記号と現地語一文。特別な扱いは明確な結論として記載
責任者情報スイス輸入者の名称と住所の欄。プレフィックス 760 か輸出者自身の GTIN
規制物質と子供服OEKO-TEX や第三者報告の要否。紐、小部品、ニッケル溶出の該当有無

関連記事

スイス向けの衣料案件をお考えですか。品種、組成、販売チャネル、必要な言語をお送りください。タグ、主ラベル、洗濯表示ラベル、包装をスイス基準で一式サンプル化し、独仏のレイアウトと責任者欄も同時に整えます。サンプルは 3〜7 日で発送し、東莞虎門の工場見学も歓迎します。

スイス向けラベルプランの相談 →