衣料副資材も pH を測る必要があります。織りラベル、洗濯表示ラベル、紙の値札、ポリ袋は、いずれも肌か衣類に接します。糸の糊付け、コーティングの中和剤、紙の填料、フィルムの添加剤は、いずれもアルカリ残留を成品に持ち込みます。中国の GB 18401 は pH をホルムアルデヒド、異臭、発がん性芳香族アミンと並ぶ繊維製品の基本安全項目とし、乳幼児用、直接肌に接するもの、直接接しないものの A・B・C の3類に分けています。多くのブランドは生地に注目し、副資材は検品で数項目を抜き取るだけです。pH は最も見落とされやすく、再試験で最も落ちやすい項目のひとつです。

本記事は、なぜ副資材にも pH が必要か、限度値の読み方、5種類の副資材ごとのアルカリ源を整理し、続いて試験方法の口径と誤差、規格外となった場合の4つの改善経路、そのまま購買文書に書ける5つの検収条項を扱います。

1. 肌に接する面では、風合いより先に pH が語る

健康な皮膚の表面は弱酸性(おおよそ pH 4.5〜5.5)で、この酸膜が細菌を抑えバリア機能を保つ条件になっています。繊維製品にアルカリ性物質——糊付けのアルカリ、反応染料の固着後のアルカリ、コーティングのアンモニアやアミン、紙の炭酸カルシウム填料——が残ると、接触時にこの膜を押し上げます。現れ方は明らかなアレルギーとは限らず、かゆみ、つっぱり、汗をかいたときの刺痛が多く、乳幼児、湿疹体質、1日8時間以上着る密着型の商品でクレームが集中します。皮膚反応には遅延があり、連絡が来る頃には2回洗濯済みなので、立証は困難です。

法規は二つの系統を分けて考える必要があります。中国の GB 18401 は強制国家規格で、pH はホルムアルデヒド、異臭、発がん性芳香族アミン染料と並び、国内販売や中国国内で発注する案件で引用されます。EU の REACH には繊維の pH に関する統一的な限度値はなく、実際の拘束は買い手が指定する OEKO-TEX STANDARD 100、bluesign、顧客独自の RSL から来ます。これらは製品区分ごとに pH 範囲を定めています。したがって同じロットが「国家規格適合」かつ「顧客要求不適合」になり得るため、仕様書には根拠規格を明記する必要があります。

2. 限度値の読み方:A・B・C の3類と社内余裕

GB 18401 の分類は素材ではなく接触の仕方で決まります。36か月以下の乳幼児用品は A 類、直接肌に接するものは B 類、直接接しないものは C 類です。同じ一着でも副資材ごとに区分は衣類に従います。ベビーのボディスーツなら織りラベル、洗濯表示、値札まですべて A 類判定。アウターの値札は C 類でも、ネックラベルと洗濯表示は通常 B 類のままです。着用者のうなじに直接当たるためです。

区分 対象 規格値 推奨社内管理
A 類 乳幼児(36か月以下) 4.0〜7.5 5.5〜7.0
B 類 直接肌に接する 4.0〜8.5 6.0〜7.5
C 類 直接肌に接しない 4.0〜9.0 6.5〜8.5

社内余裕は慎重さではなく算数です。規格値は合否の線であって生産目標ではありません。副資材が工場を出てから店頭に届くまでに、高湿の海上輸送、倉庫での積み上げ、プレスやスチームを通り、pH は少し上がります。消費者がアルカリ性洗剤で濯ぎ不足のまま洗えば、実測値はさらに上がります。目標を限度値の内側に1〜1.5 単位置くことが、これらの緩衝になります。

💡 規格は上限だけでなく範囲です。酸性が強すぎる(4.0 未満)場合も不合格で、酢酸やクエン酸で中和しすぎると別の問題が起きます。酢酸臭の残留、染料の加水分解、保管中のさらなる酸性化です。中和の目標は pH 6.5〜7.0 の帯であり、低ければ低いほど良いわけではありません。

3. 5種類の副資材、アルカリ源はそれぞれ違う

同じ pH の数値でも原因はまったく違い、対処も変わります。発生源を特定するほうが、何度も再試験に出すより有効です。

  • 織りラベル・ネックラベル:糸の糊付け(澱粉、PVA)とシルケット加工・糊抜き工程に残るアルカリ。濃色のジャカード織りラベルで染色後の水洗が不足したケースが典型で、切り口が硬くざらつく症状が同時に出ます。
  • 洗濯表示ラベル:ポリウレタンやアクリルのコーティングは槽液を安定させるためアンモニアやアミンで pH 調整されます。ナイロンテープは基材自体がややアルカリ性で、ポリエステルは比較的安定しています。コーティングが厚く光沢が強いほど残留リスクは上がります。
  • 紙の値札:炭酸カルシウム填料と表面サイズ剤により、水抽出液はもともとアルカリ性で 8〜9 はよくある値です。再生パルプや填料の多いコート紙ではさらに高くなります。値札は通常肌に接しないため C 類ですが、子供服・乳幼児製品の値札は A 類判定となり、これは見落とされがちです。
  • ポリ袋とフィルム:スリップ剤(エルカ酸アミドなど)、アンチブロッキング剤、帯電防止剤の多くはアミンや脂肪酸アミドで、PE フィルムは OPP より多く持ち出します。印刷インキのアミンも寄与します。
  • 粘着ラベルとホットメルト接着剤:アクリルエマルション重合は通常アンモニアで中和され、乾燥後も少量が残ります。ラミネート用ホットメルトも高温でアルカリ成分を放出することがあります。襟の内側に貼る粘着織りラベルは、この分類で最も注意すべき品目です。

経験則として、色が濃い、コーティングが厚い、紙が安い、フィルムが柔らかいほどアルカリ性が出やすい傾向があります。同じ商品が別ロットで突然不合格になるのは、工程が悪化したのではなく、糸の供給元、紙の工場、あるいはコーティング処方が安価な版に変わったためです。

4. 試験の進め方:数値より方法の口径が重要

中国の標準的な方法は GB/T 7573 の水抽出法で、国際的には ISO 3071 に対応します。原理は同じで、試験片を細断し、規定比率の水(版によっては 0.1 mol/L 塩化カリウム溶液)とともに密閉容器で一定時間振とう抽出し、静置後に抽出液の pH を測ります。単純に見えますが、報告書に4点が明記されていないと二つの試験所の数値は比較できません。方法の版、抽出媒体、温度と時間、そして採取部位です。

  • 採取部位:織りラベルは切口と織り中央の両方、洗濯表示はコーティング面と印刷面、紙の値札は印刷部と空白部を含めます。基布だけを採ると、きれいだが意味のない数値になります。
  • 液比と試験片量:比率のずれは結果を直接変え、試験所間の意見相違の最も多い原因です。仕様書には「規格規定の液比による」と明記し、単に「国家規格による」と書かないこと。
  • 環境と操作:抽出液を開放状態に置くと空気中の二酸化炭素を吸収して低めに出ます。pH 電極はアルカリ側で応答が遅く、2点または3点の緩衝液で校正し、測定ごとに洗浄が必要です。こうした細部が 0.2〜0.5 単位の差を生み、それはまさに判定境界の幅です。
  • 繰り返し:1ロットにつき少なくとも3つの平行試験片を採り、中央値または規格が定める判定規則で処理します。1片の結果では不合格とも合格とも判断できません。

5. 規格外のあと:4つの改善経路とそれぞれのコスト

  1. 糊剤や基材を変える。改質澱粉、低アルカリ PVA 処方、糊付け不要の糸は残留を大きく下げますが、再サンプリングが必要で、腰の強さ、風合い、切り口の毛羽が変わります。サンプル期間が残る新作に向きます。
  2. 水洗と中和を強化する。染色後の温水洗に続いてクエン酸や酢酸で浴を pH 6.5〜7.0 に調整するのが最も直接的な工程対策です。代償は水、収縮、納期です。洗い工程が増えると織りラベルの収縮が 0.5〜1.5% 増えることがあり、寸法公差も合わせて見直す必要があります。
  3. 紙の値札は処方を変える。炭酸カルシウム填料を減らし低アルカリ表面サイズに変えると、水抽出 pH を 0.5〜1.5 単位下げられます。水性バリアコートという手もありますが、紙の風合いとインキ密着を犠牲にし、リサイクル性や堆肥化を謳う場合は再評価が必要です。
  4. 区分と緩衝。すでに生産中で工程変更の時間がない注文では、選別、社内余裕の拡大、成品を風通しの良い場所で一定期間置くこと、洗濯表示で強アルカリ洗剤を避ける案内が現実的です。これは止血であって治療ではありません。
💡 「洗えば済む」を対策にしないこと。洗濯は pH を下げますが、収縮、毛羽、色相も動きます。乳幼児製品は後処理で救うべきではありません。A 類の幅は 4.0〜7.5 と狭く、8.2 から 7.4 に下がって適合に見えても境界上であり、次のロットも同じ位置に来ます。

6. pH を購買文書に入れる:5つの検収条項

  • 区分と限度値を明記する。仕様書の冒頭に「GB 18401 の A 類、pH 4.0〜7.5」または「B 類、4.0〜8.5」と書き、試験方法を GB/T 7573 または ISO 3071 と明示します。区分の混在が最も多い紛争源です。
  • 採取部位を明記する。「試験片はコーティング、印刷、切口を含むこと」と書けば、「試験所が基布だけを測った」という逃げ道を塞げます。
  • 判定規則を明記する。例:1ロットにつき3つの平行試験片を採り、中央値が限度値内であること。いずれか1片が外れた場合は1回再試験し、再試験も外れた場合はロット不合格とし、再試験費は責任側の負担とする。規則が明文化されれば、検品現場が情に頼る必要はありません。
  • 報告書と保管見本を求める。各ロットに第三者報告、または社内報告+四半期ごとの第三者照合を付け、見本は少なくとも12か月保管し、ロット・機台・日付を袋に記載します。問題が起きたとき、保管見本だけが自己証明の手段です。
  • 変更管理を明記する。糸、基材、コーティング処方、紙の供給元のいずれかを変更する場合は事前通知と再試験を義務づけます。pH の不良は「何も変えていない」ロットで9割起きます。実際には上流が静かに素材を変えているのです。

最後に。pH は入口の項目にすぎません。同じ仕様書には通常、ホルムアルデヒド、発がん性芳香族アミン染料、重金属、フタル酸エステル(コーティングと印刷)、金属部品のニッケル溶出も並びます。これらを同じ採取・判定規則で書いておけば、検品で項目を後追いする事態を避けられます。

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