医療・防護服のラベルは、一般衣料より一段厳しい基準が求められます。組成やサイズだけでなく、規制上の位置づけ、性能クラス、トレーサビリティという3つを担うからです。アイソレーションガウン、手術衣、化学防護ジャケットで、クラス表記を1文字間違えたり、EU の授権代理人の住所を落としたりすると、税関検査や病院の購買審査で即座に不適合と判断され得ます。

この分野の受注は数千枚単位と小さめですが、書類要件は一般衣料よりはるかに重くなります。ラベル、包装袋、取扱説明書は同じ論理でまとめて設計する必要があり、どれか1つを単独で手配すると穴が残ります。以下、規制上の位置づけ、必要情報、滅菌適合、耐久検証、性能表示、説明書の言語という6つの項目で整理します。

1. まず規制上の位置づけを決める:一般衣料・防護具・医療機器のどれか

同じ白い不織布ガウンでも、3つの全く異なる枠組みに入り得て、ラベルの義務は大きく変わります。判断基準は製品名ではなく、製造者が示す意図する使用目的です。誰に販売し、どの場面で使い、どのような防護効果を表示するのか、という点で決まります。

  • 一般衣料:衛生や防塵など防護を目的としない場面でのみ使用し、防護効果を表示しません。ラベルは一般繊維製品の要件(組成、原産地、取扱い表示、輸入者情報)に従います。
  • 個人用防護具(PPE):液体・粒子・化学物質への防護を表示する製品。EU では (EU) 2016/425 の対象で、CE マーク、EU 型式検査証明書(モジュールB)、認証機関番号が必要です。
  • 医療機器:医療現場、手術、感染隔離での使用を表示する製品。EU では MDR (EU) 2017/745 の対象で、CE、リスククラス(クラスI滅菌、Is、IIa など)、UDI、EU 授権代理人が必要です。

2. ラベルに必ず記載する5つの情報

規制上の位置づけが決まって初めて、ラベルの内容に根拠が生まれます。以下の5項目は審査で1つずつ照合される部分で、証明書と1行でも食い違うと是正を求められます。

項目 要件 よくある誤り
製造者表示 名称と連絡可能な実住所。EU では輸入者または授権代理人も
CE マークと機関番号 リスククラスに応じて表示し、4桁の認証機関番号を CE の隣に
型番と性能クラス 証明書の別紙と一字一句一致させる(Type 5/6、EN 13795 のレベルなど)
ロット番号と日付 滅菌品はロット番号、滅菌日、有効期限が必要
使用条件 使い捨てか再使用か、洗濯回数の上限、禁忌事項

3. 滅菌適合:ラベルと包装はセットで検証する

滅菌方式はラベルと包装の物性を直接変えます。エチレンオキサイドは浸透して残留し、放射線は一部の材料を脆く黄変させ、134℃の蒸気は粘着剤をはみ出させインキを軟化させます。素材・インキ・粘着剤・包装袋は、同じ滅菌方式に対してセットで検証する必要があり、個別に選んではいけません。

  • エチレンオキサイド(EO):多孔質材料の吸着とエアレーション時間に注意。通気フィルムと紙・フィルム袋の組み合わせが一般的で、ラベルは吸インキ性の高い紙を大面积で使わないようにします。
  • 放射線(25〜50 kGy):インキと粘着層は黄変しない耐性が必要で、塩化水素を放出して黄変する PVC は避けます。
  • 蒸気滅菌:134℃以上への耐性が必要で、合成紙や BOPP は収縮・変形することがあり、ポリエステルや専用耐熱素材が適します。
  • 検証:滅菌ロットごとにケミカルインジケータを同梱し、ラベルにインジケータ貼付位置と記録欄をあらかじめ用意します。病院側に場所を探させないこと。

4. 耐久性:洗濯回数は製品表示であり、副資材のデータが必要

再使用可能な防護服や手術衣では、EN 13795 が規定回数の工業洗濯後も性能を維持することを求めており、ラベル自体も同じ回数の後で判読できなければなりません。業界の目安は工業洗濯75回で、温度とプログラムは規格版と顧客要求によります。

  • 洗濯後の目視:文字・記号・ロット番号が脱落せず、最小の文字サイズでも判読でき、端が毛羽立たないこと。
  • 取扱い表示:ISO 3758 に従って表示し、記号と洗濯回数の上限が矛盾しないようにします。
  • 縫製と端処理:断ち切り、超音波シール、パイピングのどれを選ぶかで洗濯後の巻きや剥離が決まるため、サンプル段階で決めます。
よくある落とし穴:75回洗濯と表示しながら、実際は一般的なポリエステル織りネームを使っていて、20数回で端が毛羽立ち文字が抜けます。洗濯回数は下げ札に印字された製品表示であり、文章ではなく副資材の実測データで裏づける必要があります。

5. 性能表示:試験済みのクラスだけを書き、効果をうたう語は避ける

防護クラスはこの分野で最も問題が起きやすい部分で、製品規制と景品表示・広告規制の両方の対象になります。原則は1つだけです。ラベルに書いたクラスはすべて有効期内の試験報告書に対応し、報告書の型番とラベルの型番が同一でなければなりません。

  • レベルと機関を明記:EN 13795 には1〜3級があり、EN 13795 適合とだけ書いてもバリア性能は伝わりません。レベルと試験機関を記載します。
  • 効果をうたう語に注意:抗菌・抗ウイルスには対応規格(ISO 18184 など)と届出の裏づけが必要で、一般の防護製品でこうした表示はリスクが高いです。
  • 範囲を越えない:Type 3・4・5・6 は衣服全体の試験クラスで、生地の試験結果をそのまま衣服のクラスとして表示することはできません。

6. 説明書・警告表示・言語:最も見落とされやすい部分

説明書と警告表示は、ラベル以上に見落とされがちです。EU では販売先国の公用語で説明書を同梱することが求められ、使い捨て製品では再使用できない理由と廃棄方法を記載します。禁止記号だけを印刷して済ませないこと。

  • 言語:加盟国の公用語に対応します。実務では多言語の説明書や多言語 PDF を同梱することが多く、英語のみは不可です。
  • 位置:警告表示は最小販売単位の包装に必要で、外箱だけでは無いのと同じです。
  • 版面の余裕:多言語化には余白が必要です。フランス語・ドイツ語・スペイン語は英語の1.2〜1.4倍の長さになるのが普通で、英語版の版面をそのまま使うとはみ出します。

7. 発注前の確認チェックリスト

  • まず規制上の位置づけと表示範囲を決め、その後にラベルの内容を決めます。順序を逆にすると作り直しになります。
  • 証明書と試験報告書を入手し、クラス・型番・有効期限の3点がラベルと一致するか確認します。
  • 滅菌方式を決め、ラベルのみでなく包装袋とセットでサンプルを作ります。
  • 洗濯回数の上限を決め、その回数で耐洗濯検証を行います。実験室データでそれ以上の表示を支えてはいけません。
  • 販売国リストと必要言語を洗い出し、説明書とラベル文言を同時に確定します。
  • バーコードまたは UDI の規則と印字位置を確認し、可変データの印刷やインクジェット用の空き領域を確保します。

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