イタリアの衣料ラベルで難しいのは繊維組成ではなく、三つの国内ルールです。イタリア語、Made in Italy の法的境界、そして包装の CONAI 環境ラベル。前二者は小売の受入可否を、第三はポリ袋や紙袋が倉庫に入るかどうかを決めます。過去2年、イタリアでの返品が最も集中したのはこの第三の点です。

本稿では5点を扱います。イタリア語表示の範囲と定番用語、永久ラベルの4項目、Made in Italy と 100% Made in Italy の違いおよび受託生産での境界線、包装の CONAI 表示の入れ方、サイズ表記の三点一致。イタリアブランドの生産を請ける工場と、イタリアへ直接輸出する事業者向けです。

1. イタリア語は法定の言語

イタリア消費者法典(D.Lgs. 206/2005)は、消費者向け情報をイタリア語で提供することを求めます。繊維組成は EU 1007/2011 に従いますが、用語は composizione、lavaggio、prodotto in、importato da という標準語を使います。英語のみのラベルは百貨店やセレクトショップの受入で返品されることが少なくありません。

実務ではイタリア語を先に、英語を並記します。1言語指定ならイタリア語版にします。北欧ほど英語のみが通用する市場ではありません。直訳は避けます。Machine wash cold は Lavare a macchina freddo ではなく、Lavare in lavatrice a freddo が標準です。

2. 永久ラベルの4項目

  • 繊維組成(composizione):重量比の降順、イタリア語の標準繊維名で。
  • 取扱い表示(lavaggio / cura):ISO 3758 記号とイタリア語の文言、記号の順序は統一します。
  • 原産地(prodotto in):実際の生産国を書きます(例:Prodotto in Cina)。ブランドがイタリアでも製品がイタリア製になるわけではありません。
  • 責任事業者(importato da):EU 輸入者またはイタリア国内の責任企業の名称・住所。法人まで追える形にします。

4項目は1枚の洗濯表示にまとめても、主ラベルと分けても構いません。イタリアのセレクトショップは洗濯表示の肌触りと位置に北欧以上に敏感で、後ろ襟中心の硬いラベルは脇縫いや裾へ移すよう求められることが多く、試作段階で確認します。

3. Made in Italy の法的境界

イタリア2010年4月8日法律第55号は、Made in Italy 表示を使うにはデザイン・製造・加工が主としてイタリアで行われることを要件とします。イタリアで最後の工程(タグ付け、プレス、梱包、検品)だけを行うのでは足りません。受託生産では特に重要で、イタリアブランドでも中国生産なら実際の生産国を表示します。

100% Made in Italy は別の階層です。2009年法律第166号が導入した任意の認証マークで、全工程がイタリアで行われ、認可機関の確認を受けることが要件です。企業が勝手に印刷する飾りではなく、確認なしには使えません。イタリア税関と Guardia di Finanza はこの2種の表示を日常的に取り締まり、虚偽表示は単なる表示不備ではなく刑事リスクです。

💡 ヒント:客先のタグ版下に Made in Italy とあり、中国で生産する場合、そのまま印刷しないでください。いったん止め、書面で確認を取ります。古い版下を流用している例が少なくありません。実際の生産国に一語直すほうが、貨物止めよりはるかに安く済みます。

4. 包装の CONAI 環境ラベル

2023年1月1日以降、イタリアでは市場に出る包装に環境ラベル(材質コードと分別指示)が求められます。PAP 21 と Raccolta carta(紙)、PE 4 と Raccolta plastica(プラ)などです。ハングタッグ袋、ポリ袋、紙袋、外箱が対象になります。副資材業者は衣料ラベルに気を取られ、自分が納める包装が同じ規制の対象だと見落としがちです。

実務では、イタリア顧客向けのポリ袋・紙袋に表示用の版面を確保し、コードと分別文言は顧客が自社の CONAI 申告に基づいて確定します。工場側で推測しないこと。紙プラ複合やアルミ蒸着フィルムは誤判定が最も多く、書面でのコード提示を必ず取ります。

5. 用語とサイズの一致

イタリアの婦人服は IT 38–52 が一般的で、EU 34–48 とは数値が一致しません。タグのサイズシール、主ラベル、洗濯表示の3か所を揃えます。イタリアではサイズの混乱が返品理由の上位で、越境EC事業者が EU サイズをそのままタグに印刷する例が目立ちます。

中国語 イタリア語の標準表記 よくある誤り
組成 composizione fibre のみ
綿 cotone cotton(英語)
ポリエステル poliestere poliester(e 抜け)
ポリウレタン elastan spandex、elastam
原産地 prodotto in Cina made in Cina(混在)
サイズ taglia IT 40 size M(換算不能)

6. 実際に多い4つの誤り

  • 英語ラベルにイタリア語シール。シールは仮表示扱いでセレクトショップは受け取らず、店頭で剥がれれば無表示と同じになります。
  • 古い版下の Made in Italy を流用。客先の旧版下がそのまま、工場が印刷し、イタリア到着後に虚偽表示と認定されます。
  • 包装に CONAI 表示が無い。ポリ袋・紙袋に材質コードと分別指示が無いと入庫できず、全数袋替えになります。
  • 3か所のサイズ不一致。タグは IT 40、主ラベルは M、洗濯表示は EU 38。消費者は EU 表記で買い、合わずに返品となり、負担はブランドに来ます。

7. 試作前の7つの確認

  1. イタリア語版の作成者と校正者を決め、用語を composizione / lavaggio / prodotto in / importato da の4語で揃えます。
  2. Made in Italy と 100% Made in Italy:生産国を確認し、口頭の了解ではなく書面で回答します。
  3. 包装ごとに CONAI 表示の要否を確認します。タグ袋、ポリ袋、紙袋、外箱を個別に。
  4. サイズ体系:タグ・主ラベル・洗濯表示を IT 表記に統一し、必要なら EU 換算を併記します。
  5. 洗濯後の判読:3回洗濯後にイタリア語が読めるか。塗工紙ラベルは慎重に。
  6. 警告表示:子供服の小部品、ポリ袋の窒息警告など、顧客と EU の慣行に沿って追加します。
  7. 書類の一致:原産地と責任事業者の住所をラベル・送り状・パッキングリストの4点で揃えます。

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