衣料副資材には、数量は多くないのに欠品が許されないものがいくつかあります。洗濯表示ラベル、メインラベル、ハンガータグ、タグ止め具、ポリ袋です。単価は安いのですが、一つ欠けるとその荷口全体が出荷できません。そこで「在庫の一部を顧客側に置いておく」という運用が一般化しました。委託在庫(consignment)とベンダー管理在庫(VMI)がこれにあたります。荷物は顧客または第三者の倉庫にあり、所有権はサプライヤーに残り、使用分だけ請求します。理屈は簡単ですが、実務で難しいのは在庫水準・照合・終了条項です。
本記事は、委託在庫を「やるかどうか」から「契約にどう書くか」まで整理します。三つの在庫モデルの違い、委託が割に合う条件、在庫水準の計算、使用量ベースの請求と月次照合の運用、置き場所をサプライヤー倉庫・顧客工場内・保税倉庫・海外倉のどれにするかの判断、そして契約に明記すべき条項です。最後に、打ち合わせ時に伝えるべき6項目を挙げます。
1. 三つの在庫モデルをまず切り分ける
同じ「在庫を持つ」でも、資金とリスクの所在はまったく異なります。三つを並べて見れば、委託在庫が本当に必要な選択かどうかが分かります。
| モデル | 荷物の置き場所 | 誰が資金を負担するか | 請求の基準 | 向く場面 |
|---|---|---|---|---|
| 買い取り(通常発注) | 顧客の倉庫 | 顧客 | 出荷または着荷で請求 | 使用量が安定し、まとまった数量 |
| 緩衝在庫(サプライヤー側) | サプライヤーの倉庫 | サプライヤー(上限を合意) | 顧客の発注時点で請求 | 回転が速く在庫を持ちたくない |
| 委託在庫 / VMI | 顧客倉または第三者倉 | 払い出されるまでサプライヤー | 実際の払い出し量で月次請求 | SKUが少なく消費が予測でき、欠品コストが高い |
2. 委託在庫が割に合う条件
- 使用量が予測できること。同じ型番の追加発注が続き、月次使用量の変動がおおむねプラスマイナス3割以内なら、水準を計算できます。
- SKUは絞る。常備5〜20品番程度が適正で、数十〜百品番を委託にすると管理コストが節減分を上回ります。
- 単価が低く欠品コストが高いこと。洗濯ラベルやタグ止め具は1箱の金額は小さいものの、欠品でラインが止まれば在庫資金をはるかに超える損害になります。
- 補充リードタイムが顧客の許容欠品期間より長いこと。海上輸送25〜35日の路線では委託の効果が最も出ます。
- 顧客がデータを出すこと。少なくとも週次の在庫と消費量の共有が必要で、それがなければVMIは単なる「置き荷」です。
3. 在庫水準の計算
在庫水準は勘で決めるものではありません。三つの数値で枠組みが作れます。日平均消費量(D)、補充リードタイム(L)、安全在庫(S)です。あとはこの三つの係数を調整するだけです。
- 発注点 = D × L + S。安全在庫は D × L の3〜5割が一般的で、変動が大きい品番は標準偏差の1〜1.65倍で計算します。
- 最大水準 = 発注点 + 1回の発注ロット。ロットは最小発注量を下回らないようにします。ハンガータグの試作は2,000〜3,000枚、織ラベルや洗濯ラベルは1,000mまたは300〜500枚が目安です。
- 月次で実績と予測の乖離を確認します。2か月連続で3割を超えるなら、在庫を増やすのではなく水準か予測を見直す合図です。
- ツービン方式や min/max かんばんを使えば判断が減ります。1箱目が空になったら補充をかけ、2箱目は緩衝のみ。ルールが簡単なほど運用が続きます。
4. 請求と照合:委託在庫でもめる最大の論点
- 所有権とリスクの移転時点は明記が必須です。多くは払い出し時に移転し、輸送・保管中の損耗はサプライヤー負担とします。入庫時移転として価格を調整する方法もあります。どちらでも構いませんが、曖昧さは許されません。
- 使用量ベースの請求:顧客の実際の払い出し記録(出庫票またはシステムデータ)で月次請求し、照合日を固定します。例えば毎月5日までに前月分を突き合わせます。
- 棚卸差異:許容差異率(通常プラスマイナス1%)を合意し、超過分は責任側が負担します。棚卸は四半期に1回、または季節の切り替え前後に各1回が目安です。
- 価格改定の窓口:紙・糸・為替は変動するため、四半期に1回の改定と30日前の書面通知を合意します。随時の値上げより長期的な協力関係を保ちやすくなります。
- 通貨と為替の基準:外貨建てでは適用レートを明記します。請求日の中間相場か前月平均か。未記載のままにすると四半期末に必ず揉めます。
5. 置き場所の選択:四つの候補の比較
| 置き場所 | 倉庫費の負担 | 税務・通関 | 柔軟性 | 向く場面 |
|---|---|---|---|---|
| サプライヤー倉(国内) | サプライヤー | 最も簡単 | 最も高い。仕様変更やまとめ出荷が容易 | 初回協力、使用量が未確定 |
| 顧客工場内・顧客倉 | 通常は分担または顧客負担 | 簡単 | 中。近くから素早く払い出せる | 同一都市・同一国内の長期協力 |
| 保税倉庫 | サプライヤー(保管料込み) | 通関前は輸入税なし、払い出し時に関税手続き | 中 | 輸入時税金の支払いを遅らせたい |
| 海外倉(顧客の国) | サプライヤー | 輸入通関済みで税負担は前倒し | 中〜高。現地回転が明確に速くなる | 海上輸送が長く、48〜72時間での補充を求められる |
6. 契約に必ず明記すべき条項
- 最低購入のコミットメント:委託は顧客に義務がないという意味ではありません。年間最低消費量または最低購入額を合意しないと、在庫リスクが一方的にサプライヤーへ寄ります。
- 在庫上限と滞留在庫の扱い:最大水準を定め、一定期間(例:12か月)払い出しのない在庫は顧客が割引価格で買い取るか返品する、運賃負担も明記します。
- 版と改訂:副資材の素材や色番が変わったとき、旧在庫の扱いを事前に決めます。一般的には移行期間を設け、その間は新旧を併行して出荷します。
- 品質責任とクレーム期限:顧客倉で不良が見つかった場合の追跡方法と補充期限を明記します。例:書面通知から3営業日以内に補充発送。
- データの可視性:顧客はリアルタイム、または少なくとも週次の在庫・消費データを提供します。これがVMIの前提であり、水準を下げる唯一の根拠です。
- 終了と買い戻し:契約終了時の残存在庫の買い取り比率、期限、運賃負担は開始時に決めます。終わる日に話し合うものではありません。
- 独占性:そのカテゴリーを独占供給とするかは、今後の価格交渉余地に直結します。無期限ではなく期間を区切ることを勧めます。
7. 委託在庫の打ち合わせで用意すべき6項目
- 常備SKUのリストと各品番の仕様:素材、寸法、加工、梱包方法。
- 品番ごとの月平均消費量と季節変動:繁忙期が閑散期の何倍か。
- 現在の補充リードタイムと、許容できない欠品日数。
- 希望する置き場所と倉庫所在地:サプライヤー倉、工場内、保税倉、海外倉のいずれか。
- 請求サイクル、通貨、支払条件:月次か隔月か、サイト何日か。
- 年間使用量の予測と最低購入コミットメント:コミットできる量があれば、サプライヤーは価格と水準を同時に最適化できます。
💡 ヒント:委託在庫は「倉庫を顧客側に移す」ことではなく、情報と在庫を交換することです。顧客が実際の消費データを出して初めてサプライヤーは水準を下げられ、双方が資金を解放できます。透明性がなければ、委託はより高くつく置き荷にすぎません。話を始める前に一つ確認しましょう。顧客は毎週、在庫と払い出しデータを出せますか。
関連記事
- 副資材 FAQ:すべての記事
- 副資材の在庫管理:安全在庫・発注点・滞留在庫の処理
- 小ロット快速リピート:副資材の小口発注と素早い追加生産
- 副資材の供給継続:断供への備えと代替サプライヤー
- 副資材のリードタイム:試作・生産・量産日程
常用副資材を顧客倉や海外倉に置くことを検討中ですか。SKUリスト、月平均消費量、置き場所をお送りください。補充サイクルに合わせた推奨水準と請求スキームをご提案し、まず実物サンプルで仕様をご確認いただきます。
委託在庫のご相談 →