副資材の発注で最も見落とされる費用が「型・版」です。タグの抜き型、箔押し版、エンボス版、印刷版、織りラベルのジャカード版、ポリ袋の印刷シリンダーが該当します。製品そのものではありませんが、取引先を変えられるか、変更にいくらかかるか、2年後の追加発注で型を作り直す必要があるかを左右します。本記事では型・版の種類、版代の3つの請求方式、所有権の帰属、工場での保管、工場変更時に持ち出せるもの・持ち出せないもの、発注前に確認すべき8項目を整理します。

1. 副資材で使う「型・版」の種類

同じ「版代」という言葉でも中身はまったく異なります。一度きりの消耗品もあれば、数年・複数注文で再利用できる資産もあります。見積り比較の前に品目を揃えないと、Aの版代とBを比べて意味のない結論になります。

品目 主な型・版 再注文での再利用
タグ 抜き型、箔押し版、エンボス版、スクリーン 可。適切に保管すれば数年
織りラベル ジャカード版、裁断・折り型 同一機種なら可、他社工場では非互換が多い
ポリ袋 印刷シリンダー、ヒートシール刃 幅と機種に依存し、他社では通常不可
紙袋・化粧箱 抜き型、印刷版、押し罫型 可。シリンダーは幅に依存

2. 版代の3つの請求方式

版代そのものより、条件の不明確さが問題です。同じ「版代300元」でも、一切返金されない場合もあれば、5万枚で全額返金される場合もあります。交渉で確認すべきは金額ではなく、返金条件と所有権の記載です。

方式 仕組み 向く場面と注意点
単独計上・返金なし 初回のみ請求、再注文では不要 異形・高単価品。再注文で本当に無料かを確認
数量達成で返金 先払い、累計数量(例:3万〜10万個)達成で返金・相殺 継続発注のあるブランド。累計数量と有効期間を文書化
単価に按分 版代を単価に含める 小ロットで手続き簡素。ただし他社での作り直し時に比較基準を失う

3. 所有権:支払者と帰属先

  • 版代を顧客が負担した場合、実物の型・版は通常顧客の所有物で、工場は保管を委託されているにすぎません。見積メールに一文で明記しましょう。2年後に工場を変える際、再費用を払うかの根拠になります
  • 工場の汎用型は課金も譲渡もされません。標準の丸角型、定寸型、汎用シール刃は工場の資産です。こうした「版代」が計上されたら理由を確認しましょう
  • デザイナーの原本は型・版そのものではありません。AI/PDFは図案であり、抜き線、塗り足し、箔押し用の版データは別ファイルです。サンプル段階でバックアップを求めましょう

4. 保管:版庫の台帳と保存年限

きちんとした工場は顧客の型・版に番号を振り、台帳に記録し、区分保管し、注文書と梱包明細に版番号を記載します。これで再注文でも同じ型を使えます。管理がずさんな工場は「型が見つからない」ことが多く、顧客が再度費用を負担することになります。

  • 保存年限:顧客専用の型は通常2年、長い工場で3年。期限超過や発注終了の確認後は廃棄されることがあり、適切な運用は廃棄の15〜30日前に書面で通知することです
  • 通常の摩耗は工場負担:抜き型の鈍り、箔押し版の摩耗、シリンダー鍍金の劣化は生産消耗です。図案や寸法変更による作り直しは通常顧客負担です
  • 保管条件も寿命に影響します。抜き型は立てて保管し、湿気と錆を避け(特に華南の雨季)、箔押し版は衝撃による変形を避け、シリンダーは梱包して保護します。湿気の多い倉庫で2年置いた型は錆びて使えないことがあります

5. 工場変更:持ち出せるもの・持ち出せないもの

取引先を変える際、最も価値があるのは実物の型ではなく電子データです。抜き線、塗り足し付き図案、箔押し用データ、織りラベルのジャカードファイル、ポリ袋の印刷レイアウト。これらがあれば新工場は開発費なしで着手できます。実物の型が使えるかは機種次第です。

  • 通常持ち出し可:タグ抜き型、箔押し版、エンボス版、紙袋の型。新工場の機種と寸法が合えば多くは再利用できます
  • 持ち出し困難:織りラベルのジャカード版(シリンダーは織機ブランドと幅に依存)とポリ袋の印刷シリンダー(幅とシール機に依存)。多くは廃棄となるため、電子データの移管が現実的です
  • 引き渡し手順:未払い精算 → 書面での引渡し確認 → 版庫から出庫・点検 → 木箱またはパレット梱包 → 発送または引き取り。運賃と輸送損傷の責任は事前に取り決めます。型が歪んだり箔版が欠けたりすれば廃棄です
  • 移管後は再確認を:同じ型でも品質は同じとは限りません。紙、インキ、圧力、設備が変わるため、初回はサンプルで色と寸法を確認してから量産します

6. 発注前チェックリスト

  • 見積りで版代を別項目にし、含まれる版(抜き型/箔/エンボス/ジャカード)を明記して後出しを防ぎます
  • 返金条件を明記:数量、有効期間、相殺か返金か
  • 所有権を明記:顧客が負担した版は顧客所有で工場が保管、保存年限も記載
  • 以降の注文書と梱包明細に版番号を記載し、再注文でも同じ型を使い色・寸法のばらつきを防ぎます
  • 電子データも併せて入手:抜き線、塗り足し付き図案、箔データ、ジャカードファイルを自社の副資材アーカイブに保存します
  • 作り直し費用の分担を合意:図案変更は顧客負担、通常摩耗は工場負担
  • 将来の工場変更を想定するなら、どの型が移管可能か、返送費の目安を早めに確認しておきましょう
版代は金額より条件を:「いくらか」は今回の注文だけの話です。「含まれる版、返金数量、所有権の記載、2年後の有無、移管可否」が今後3年のコストを決めます。質問をメールテンプレート化し、毎回の見積り依頼に添えましょう。

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