金属副資材は衣料の中で最も錆びやすい部分です。ボタン、スナップ、ジッパーのスライダー、リベット、ハトメ、コードストッパー、タグ金具が該当します。製品や店頭サンプルに錆が出れば、手直しかクレームになります。原因は生地ではなく、めっき厚、洗い加工の条件、包装保護の3点にあることがほとんどです。
本記事は5部構成です。腐食がどこから来るのか、めっきと基材の選び方、塩水噴霧試験の時間と判定の書き方、洗濯後に錆が出たときの切り分け手順、そして見積依頼にそのまま書ける検収基準を示します。
1. 腐食はどこから来るか:よくある4つの環境
めっき完了から消費者が着用するまでの間に、金属部品はいくつもの腐食環境を通過します。多くのクレームは工場出荷前にすでに原因が仕込まれています。
- 製品洗いとストーンウォッシュ:アルカリ洗剤と機械的な回転でめっきが摩耗します。デニムの金具で最も多く見られます。
- 汗:塩化物イオンと乳酸が表面でガルバニック腐食を起こします。亜鉛合金ダイカストが最も敏感です。
- 海上輸送の高湿度:コンテナ内の相対湿度は長期間80%を超えることがあり、昼夜の温度差で金属表面に結露の水膜ができます。
- 包装材料そのもの:酸性の台紙、硫黄を含むゴム、PVC ブリスタから出る塩素は錆を加速します。最も見落とされる要因です。
2. めっきと基材の選び方:価格ではなく用途で決める
| めっき・工程 | 主な基材 | 耐食性と使用の注意 |
|---|---|---|
| ニッケルめっき | 黄銅、亜鉛合金 | 光沢が良く安価。ニッケル溶出は規制対象のため肌に触れる部品では慎重に |
| 亜鉛ニッケル合金 | 鉄基材、亜鉛合金 | 塩水噴霧に最も強く、バックルやスライダーに多用。やや灰色で封油が必要 |
| 金調・真鍮めっき | 黄銅 | 高級ボタンやタグ金具に多用。耐摩耗性が低く、透明保護層が必須 |
| ガンメタル・黒ニッケル | 亜鉛合金 | 見映えは良いが、色差と退色のクレームが最多。膜厚と試験の指定が必須 |
| ニッケルフリーめっき(パラジウム、スズコバルト) | 黄銅 | ニッケル溶出要件を満たす代替案。コストは高めで色調はやや暖色 |
3. 塩水噴霧試験:時間は使用環境に合わせる
中性塩水噴霧(NSS)は通常 ASTM B117 または GB/T 10125 で実施し、24・48・96 時間がよく使われます。長ければ安全とは限りません。厚すぎるめっきは色差、組立のきつさ、脆性的な剥離を招き、管理が難しくなります。
- 国内向けファストファッションで製品洗いなし:24時間で赤錆なしが目安です。
- デニムの製品洗い・ストーンウォッシュ金具:48時間以上、かつ洗い加工後の再試験が必須。原状のみの試験は意味が薄いです。
- 高級品や肌に触れる部品:96時間に加え、ニッケル溶出と人工汗試験を実施します。
- 判定基準は明確に:赤錆なしなのか白錆なしなのか、許容される割合と対象部位を文書化します。
4. 洗濯後の錆:この順序で切り分ける
- まず膜厚:膜厚範囲とめっきロット記録を求めます。サンプルの光沢だけでは判断できません。
- 次に封油と不動態化:亜鉛部品は封油がないと輸送中に白くなる。白錆は多くの場合、赤錆の前段階です。
- 包装材料を確認:中性・無酸の台紙と袋に替え、容積に応じて乾燥剤を入れ、硫黄入りゴムや PVC ブリスタを避けます。
- ガルバニック腐食を確認:異種金属の直接接触(アルミと黄銅、鉄ねじと亜鉛合金)は電池を形成します。絶縁ワッシャを入れるか同系金属に変更します。
- 最後に工程残留:洗い後のすすぎ不足、アルカリ残留、柔軟剤と金属の接触は数日で錆として現れます。
5. 包装と保管:出荷前にリスクを止める
- 個別に隔離:金具は無酸紙や気泡フィルムで個包装し、生地や台紙との摩擦・接触を避けます。
- 乾燥剤の置き方:容積で量を決め、金属部品の真上に置かないこと。結露水が滴ります。
- 保管条件:湿度45~60%を維持し、先入れ先出しを徹底。6か月を超える在庫は出荷前に抜き取り検査します。
- サンプル保管:ロットごとに5~10個を保管し、錆の紛争時は同一ロットで再試験します。
よくある誤解:塩水噴霧時間だけを品質指標にすること。錆のリスクは「基材とめっきの適合 + 洗い条件 + 包装保護」の組み合わせで決まります。1つだけを高めても他の2つが同じなら問題は再発します。
6. 見積と検収のチェックリスト
- 基材とめっきの名称、膜厚範囲(例:0.1~0.3 μm、または客先基準)
- 塩水噴霧の時間と判定:赤錆か白錆か、許容割合、試験方法の番号
- 洗い条件:温度、時間、洗剤の種類、洗い後の再試験の要否
- ニッケル溶出と肌接触の要件:ニッケルフリーめっきや第三者報告書の要否
- 包装方法:無酸紙、袋、乾燥剤の量、梱包の積み付け要件
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