スクラッチ付きタグは、タグ表面に削って隠す塗膜を設け、削った下に文字列やQRコードが現れる仕組みです。用途は二つ。抽選企画で「1等」「残念」を出す販促と、削ると固有コードが現れ、サイトで真贋を確認する認証です。一枚のタグがブランドの印象と接点の入口を兼ねます。

本記事では、スクラッチ付きタグの層構成、削り部の印刷と抜き加工の限界、タグに必ず記載すべき販促表示、よくある5つの失敗、そして見積依頼の最初に伝えれば版の作り直しを減らせる6項目を解説します。

この工程を追加する価値がある場面

代表的な需要は三つあります。期間が明確な販促、チャネルの真贋を切り分けたい正規販売店制度、そして店頭顧客のデータを得たいブランドです。新商品の発売、店舗周年、コラボ企画など、予算と締切のある施策では、タグを見た人を来店やスキャンへ動かせます。

逆に、定番商品で施策の受け皿も真贋需要もない場合は、スクラッチ加工はコストとクレーム要因を増やすだけです。削っても何も出ないタグは、最後にはSNSでの苦情になります。

層構成と材料の選び方

層 役割 一般的な仕様と注意点
表紙 図案とスクラッチ構造を支える コート紙300〜350gsm、または白板紙300gsm。繊維が均一でないと削ったときに毛羽立つ
下地ニス スクラッチインキの紙への浸透を防ぐ 削り部だけにスクリーン印刷。省くと削ったときにコードごと剥がれる
可変データ 1枚ごとに固有の文字列やQR インクジェットまたはレーザー。1枚ごとに固有で、照合できるデータベースを保管
スクラッチインキ 削るまで情報を隠す シルバー、ゴールド、マットシルバーのスクラッチインキ。隠蔽率は100%必須で、光に透けるものは不良
保護層 耐摩耗・防湿・手触り マットラミネートまたは部分UV。削り部を避けること。覆うと削れなくなる

順序は変えられません。印刷、可変データ、スクラッチインキ、保護層の順です。スクラッチインキは最外層で完全に乾燥させる必要があり、順序を誤ると削ったときにコードごと剥がれます。

削り部の寸法・位置・加工の限界

面積は20×8mm以上、文字高さは2mm以上を目安にします。QRを入れる場合は一辺12mm以上、周囲に2mmの余白が必要です。これを下回ると硬貨で削ることになり、表紙を突き破る確率が大きく上がります。

位置はタグ中央よりやや下、穴・抜き加工の縁・折り線を避け、紙端から5mm以上離します。円形・盾形・ロゴ型などの異形は専用のスクリーン版が必要で、版代も最小ロットも上がります。予算が厳しければ角丸長方形で十分近い仕上がりになります。

スクラッチインキはスクリーン印刷なので、版を作った時点で形状と寸法は固定されます。形状変更は版の作り直し、下の文字の変更は可変データの差し替えだけで版代はかかりません。形状はサンプル前に確定し、内容は発売2週間前まで動かせます。

販促コンプライアンス:タグに必ず記載する事項

抽選企画は多くの市場で販促行為として規制され、企画物に主催者の名称と法人名、開始・終了日、賞品と当選確率、応募・受け取り方法と期限、規則ページのURL、購入不要である旨の記載が求められます。タグの面積が足りない場合は、少なくとも規則ページのリンクと「詳細はこちら」の記載を入れます。

よくある誤りは三つ。当選確率を「必ず当たる」と書く、あるいは曖昧にするのは景品表示上の問題になります。実施期間と実際の出荷時期がずれ、終了した企画を載せた商品が店頭に並ぶ。未成年の参加に年齢記載がない。認証コードには別の落とし穴があり、照合システムのない固定コードは静的ページに飛ぶだけで、偽造防止になりません。

よくある5つの失敗

  • 削れない:インキが厚すぎる、または乾燥不足で、爪で削ると粉になり下の文字が残る。スクリーンの膜厚と乾燥温度を管理し、出荷前に手で削る抜き取り確認を行う。
  • 突き破る:表紙が250gsm未満、または削り部が抜き加工の縁に近すぎ、削ると紙ごと裂ける。300gsm以上に上げ、余白を5mm確保する。
  • コードが覆われる:全面ラミネートやニスが削り部を覆い、削ってもコードが霞む。削り部は抜き(ノックアウト)にし、製版時に専用のマスクを用意する。
  • 重複コード:可変データを1枚ずつ検証せず、二着が同じコードになり照合で露見する。インクジェット後にデータベースと突き合わせ、バッチの照合レポートを出力する。
  • 積み重ねの癒着:平積みでスクラッチ層が上の一枚の裏に押し付き、梅雨時には開梱した瞬間に跡が残る。合紙を入れる、一枚ずつシュリンクする、積み高さを下げる。

見積前に伝える6項目

  • 寸法と紙の坪量、両面印刷の要否。
  • 削り部の形状・面積・位置。図上で囲んでもらえると確実。
  • 塗膜色:シルバー、ゴールド、マットシルバー。タグの基調色と合わせるか。
  • 削った下の中身:文字のみ、QRのみ、両方。
  • 可変データの総数、照合システムとコード帯の設計が既にあるか。
  • 企画の開始・終了日、販路、納期。分割噴射か一括かの判断材料になります。

ロットについては、スクラッチ加工は通常タグと同じバッチで生産できるため試作数量にも対応できます。企画量が大きい場合は、版も噴射も一度でまとめるのが最も安価です。規則ページのURLを併せてお送りいただければ、サンプル段階でQRの遷移先を確認でき、発売後に古いページへ飛んでいたと気づく事態を避けられます。

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