EU 森林破壊防止規則(EUDR)の施行以降、欧州のバイヤーは発注前にもう一つ質問を加えました。「紙袋やクラフト紙タグのパルプはどこ産で、書類を出せますか」。理由は単純です。EUDR が見るのは製品が環境に優しいかではなく、その背後にある土地が森林破壊されていないかです。紙袋・紙箱・クラフト紙タグ・グラシン紙といった紙系の副資材と包装は、多くが紙・板紙の区分に入り、由来を説明できることが求められます。書類チェーンが整っているサプライヤーは、見積り段階ですでに一歩リードしています。

1. EUDR が対象とするもの:見た目ではなく由来

EUDR は 7 つのコモディティとその派生物(牛、カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材。木材には木製品・パルプ・紙製品が含まれます)を対象とします。適用の判断は業種ではなく HS コードです。同じ工場の紙袋とパンフレットが別のコードになり、一方は追跡が必要、もう一方は対象外ということもあります。まずすべきは「対象かどうか」の議論ではなく、HS コードを並べて一つずつ確認することです。

💡 要点:EUDR が求めるのは「この紙の背景にある林地が合法で、森林破壊されていない」というデューデリジェンスの証拠です。再生・リサイクル可・エコといった言葉は適用範囲の判断基準ではありません。

2. 義務は誰にあるか:ブランド・輸入者・サプライヤーの分担

デューデリジェンス声明(DDS)の提出義務は、商品を初めて EU 市場に置く「事業者」、つまりブランドや輸入者が主に負います。中国の副資材工場や印刷会社は提出主体ではありませんが、上流の書類が欠けていればバイヤーは声明を作成できません。紙の由来書類が受注先を決める理由はここにあります。見積りが安くても、書類が揃わなければバイヤーのチェックを通りません。

3. 紙系副資材の書類チェーンの組み立て方

書類チェーンは最初から完璧である必要はありませんが、順序は大切です。まず HS コードを確定し、次に紙の供給元を固め、最後にロットを紐づけます。次の 4 種類で買い手の質問はほぼカバーできます。

書類 通常の作成者 重要な内容 欠けた場合の影響
FSC・PEFC の CoC 認証 認証をもつ印刷会社・紙商 認証番号、有効期限、対象となる製品区分 紙の追跡可能性を確認できず、認証をもつ供給元へ切り替えられます
製紙会社・パルプ会社の声明 製紙会社(紙商経由の場合も) 品名、HS コード、原産国、パルプの由来 DDS の必須項目が埋まらず提出できません
注文とロットの対応記録 紙袋・タグを製造する副資材工場 注文番号と巻きロット・製紙ロットの対応 問い合わせが来ても紙の供給元へ遡れず、追跡が途切れます
上流の地理座標情報(必要な場合) 通常はパルプ会社・製紙会社・認証機関が保有 区画の座標、収穫・生産時期 認証経由で間接的に満たすしかなく、事前にバイヤーと方針を合意します

4. 見積り段階でよくある 4 つの誤解

  • FSC ロゴがあれば適合する:FSC は森林管理と CoC の認証であり有力な証拠ですが、バイヤーの EUDR 提出を代行するものではありません。声明はバイヤー自身が提出します。
  • 再生紙は自動的に対象外:適用の有無は HS コードと原料の由来で決まります。「環境に優しいか」で範囲を判断するのは誤りです。
  • 規則が固まってから準備する:供給元の確認と証明書の収集には数週間かかります。受注してから動くと納期が必ず遅れます。
  • 最も安い紙だけを選ぶ:書類に協力しない製紙会社は、安くても受注にはつながりません。バイヤーが提出段階で止まり、納期全体に影響します。

5. 発注前にサプライヤーへ確認したい 6 項目

  • 紙袋・タグの紙はどの HS コードに当たり、追跡が必要ですか。
  • 紙はどの製紙会社から供給され、FSC・PEFC の CoC 認証と取引検証書類を出せますか。
  • 注文番号を巻きロット・製紙ロットに紐づけ、同梱または必要時に提出できますか。
  • 上流から原産国、そして必要なら地理座標情報を出せますか。
  • 紙・坪量・構造を変更した場合、どの書類を作り直す必要がありますか。
  • 包装に印字する FSC ロゴと環境表示の文言に、使用許諾とライセンス番号はありますか。
💡 注意:EUDR の範囲とスケジュールは何度も見直されています。本記事は「誰がどの書類を出し、どう受け渡すか」という分担の話です。具体的なコード・提出時期・執行の詳細は、欧州委員会の最新公表とバイヤーのコンプライアンス担当にご確認ください。この 6 項目を送れば、1〜2 日で本気で書類を整えている供給元かどうかが分かります。

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